サイトマップ

在宅で出来る簡単な感染症予防「紙おむつ処理を例に」

在宅でできる簡単な感染症予防

1999-03-01

難病と在宅ケアより.日本プランニングセンター

㈱日本衛菅指導センター 代表取締役・理学博士 古矢光正

平成11年4月1日、「感染症のまん延の予防に必要な処置をとる」「汚染は最小限に止めなければならない」などの内容が盛り込まれた「感染症の予防及び感染症の患者の対する医療に関する法律」が施行される。これを機に、在宅でできる簡単な感染症予防についておさらいしたい。

1. 二次感染予防のポイント

在宅介護の増加にともない、在宅での二次感染が大きな問題となっている。二次感染の予防には、
「汚染物の隔離と消毒で達成できる」
という原則を理解し、その手法を知る必要がある。

まず感染には、大腸菌O-157や流感の集団発生のように、ある器物を介して間接的に他の患者や介護人に伝播され感染を起こす交差感染と、

MRSA感染に代表される自分の皮膚の表面、口腔、鼻、咽頭などに存在する微生物が引き起こす内因感染とがあり、後者は介護時の無菌的操作である程度予防することが可能である。

これは自分の体腔外に常在する微生物が体腔内に侵入することで感染を起こすため、病原体保有者であっても

体腔内に微生物が入らなければ感染症を起こさないでいられるからである。

誰でもできる簡単な無菌的操作には

①汚れた手で別の場所を触らない

②他の物と接している面を触らない、

③汚れた物は動かす前に隔離する

が挙げられる。これらの操作により、感染症のまん延の予防に不可欠な配慮である汚染物の拡散範囲を、最少限に止めることが可能となる。

感染防止のための環境保持方法

1,お掃除編

風上から風下へ

お掃除は一方向へS字ストローク

モップヘッドは熱水洗濯機を使用するか、洗浄剤で洗濯し、71度の湯温で25分、又は80度の湯温で10分加熱する。次亜塩素酸ナトリウム液は洗濯後に使用する。

2. 隔離-紙おむつの処理を例に-

在宅介護にともなう紙おむつの交換は、頻度、量ともに最も多い作業のひとつである。そのゴミは、感染源として重大な要素を含む場合もあるが、一般廃棄物として清掃局の回収日まで家庭内での保管となるため、その間は隔離し、微生物の繁殖や悪臭への配慮が必要である。さらに焼却までは移動中の隔離も必要である。

紙おむつの処理に関しては、在宅で簡単に隔離を実現できるゴミ袋が市販されている。おむつを袋に入れた後、口を縛ることで手を汚さないように、口を覆うように2枚目の袋にいれる。この操作を1枚にまとめた2重構造ポリエチレン製ゴミ袋である。 また、汚染物は即座に隔離するが、その際に持つ範囲をなるべく少なくすることも大切な配慮である。

3.消毒

消毒は、病原体汚染物から微生物を死滅させることであり、

①消毒薬の使用はもちろん

②流水で良く洗い流し、物理的に除外する、

③患部などを拭き戻さない(ワン・ウェイ)、

④乾燥させる、

⑤日光(紫外線)に当てるなどが有効とされる。

微生物は科学の進歩に対抗して幾多の変性を繰り返し、耐性菌や新生感染症として抵抗を続ける。4℃以上で発育し、室内程度の湿度と手あかや指紋程度の有機物があれば生きられるという特徴があり、糞尿、血液などの体液が感染源となり、手足や物を媒体として動かす、運ぶ、触る、などの行為により移動した結果、経口または接触により伝播、感染するという一連の感染のメカニズムを持つ。

在宅介護における感染予防は、病院のような設備がないうえに、素人である家族が管理しなければならないため、その重要性と具体的な方法をよく知る必要がある。

①消毒薬の使用:消毒を行う前に・・・

様々な種類の消毒薬が医療の場で使用されています。

消毒薬は、正しい使用方法において目的の消毒効果を得るように設計されています。

使用する前には、裏面のラベルを注意深く読んで、使用に適すること及び適切に効果を得ることを確かめます。

消毒は互換のきかない作業です。そして間違った濃度、不適切な消毒は過剰なコストとなります。

清掃部門での職業疾病は消毒薬をいくつか多用していることによるものです。故に消毒薬に曝される手袋、換気などが最小限となるような薬剤の選定を行いましょう。

次亜塩素酸ナトリウムの使用濃度

※使用濃度を 高濃度 低濃度に大別し、対象の病原体及び使用目的で区別をする。

高濃度の使用:0.5% 1類、2類感染症ウィルス、B,C型肝炎ウィルス HIV 血液(体液)汚染がある

高濃度の使用:0.05%~0.5% 4類、5類の感染性ウィルス

低濃度の使用:0.1%~0.01% MRSAを含む黄色ブドウ球菌

低濃度の使用:0.1%以上 ノロウィルスによって生じた吐物や排泄物の清拭処理

器具類の消毒:0.01~0.02% 60分間浸漬

リネンの消毒:0.01~0.02% 5分間浸漬

消毒薬、簡単濃度計算式

1000ml

つくりたい量

0.1/6

計算式:作りたい濃度(%)÷次亜塩素酸ナトリウム濃度

(市販品は6%)

16.66ml

混ぜる

②洗浄の作用

洗剤の作用

陽性洗剤(逆性洗剤):
陽性に荷電したもの、食器用洗剤に使用される。ウィルスを不活性にする。
陰性洗剤:
衣服の洗濯や家庭用洗浄剤。消毒の点では 陽性洗剤にやや劣る。

洗浄の作用,水のリンス(すすぐ)効果

汚れや微生物を浮き上がらせて洗い流すことができます。

石鹸の作用・界面活性剤の働き

洗剤(界面活性剤)は、共有結合したしっぽのような炭化水素鎖を持ち、これは油脂等の不溶性物質に入り込むことができます。
このしっぽは、陰性に荷電しており、水分子の陽性荷電を引き付け、結びついた界面活性剤と不溶性物質は水に流されることになります。

③患部などを拭き戻さない(ワン・ウェイ)

④乾燥させる。

乾燥による食物の保存は、微生物の増殖を阻止します。細菌や微生物は、水を除くことで酵素活性が阻害されて増殖が出来なくなるためです 。

手指消毒の環境においては水廻りを乾燥させることが重要です。微生物の増殖は水分を介します。
緑膿菌のようなグラム陰性桿菌に、せっけんが汚染されることがあります。環境中に常在する菌ですが、消毒薬や抗菌薬に他する抵抗性が高く、薬剤耐性を獲得した多剤耐性菌も出現しています。日和見感染を受けやすいお年寄り、子供への影響への、注意が必要となります。

⑤日の光にあてる。

日光中の紫から赤の可視光線400~700nmは、細菌中の酸化酵素の光感受性分子を酸化することにより、殺菌の効果を得ています。紫外線は40~390mmの波長から成り立っています。その中の200nm粋の波長が最も強く、細菌、ウイルスのDNAとたんぱく質の損傷による殺菌作用を得ることが出来ます。

くるりんぱで感染予防:分別収集

非感染性、感染性の紙おむつは
くるりんぱで包装して廃棄します。

現場で、即【くるりんぱ】で包装します。
汚物室まで運ぶ間の漏洩を防止します。

非感染性廃棄物と感染性廃棄物は、
容器の色分けにより分別しやすく配慮しました。
封じ込め空間をつくり、守るべき衛生空間への漏洩を防ぎます。