サイトマップ

微生物学的操作「無菌操作」遮断と隔離より

大丈夫ですか?

・微生物学的【無菌操作】遮断と隔離

2014-9-1

難病と在宅ケア・ 日本プランニングセンター

㈱日本衛菅指導センター 代表取締役・理学博士 古矢光正

近ごろ「エボラ出血熱」の報道が相次いでいる。これは大変なことだ。「エボラ出血熱」は、国際伝染病としてはP4クラスのものだ。 ところで報道からその重大性を探ることができているだろうか。???

私たちは、身近に生息する「微生物」と共存して生きている。「微生物」には私たちが生きるために役立ち必要なものと、生きることを阻害するものがある。これを「病原性微生物」と言い大きく別けると細菌、スピロヘーター、ウイルス、寄生虫などの、大きさや形態学上の分類があり病原微生物としての性質や特徴がそれぞれある。

細菌のなかには毒素(菌体外毒素)を産生すものもある。病原微生物から身を守るということは、基本的に消毒行為を十分に行うことであるが現実的には限りが有るだろう。

もっと、大切なことは、病原微生物との接触のチャンスをできるかぎり防ぐことだ。これを微生物学的操作「無菌操作」(遮断と隔離)と言う。また、免疫療法としてワクチンにより予防することもできる。

[病原微生物の危険性(度)の考え方は基本的に4分類されている。]

国立予防衛生研究所病原体安全管理規定
危険度1

多量に扱っても実験室感染の可能性がほとんどないもの

危険度2a 実験室感染の可能性がほとんどなく、仮に感染しても発病の可能性が非常に少 ないもの
危険度2b 普通の微生物学的操作で実験室感染を防ぐことが概ね可能であり、 仮に感染しても発病の可能性が非常に少ないもの。
危険度3a ①感染の機会は比較的多いが、発病は軽症に止まるもの。 ②日本に常在し、かつ、多くの人が免疫をもっているため実件室感染の可能性は少ないが、感染した場合重症になる可能性がある。
危険度3b ①実験室感染が比較的多く、感染した場合、重症になる可能性があるもの。
②有効な予防法により、実験室感染を防ぎ得るが感染した場合、重症になる可能性があり、しかも、日本国内には常在しないもの。 ③実験室感染の可能性はほとんどなく、通常の微生物学的操作をすれば、確実に感染を防げるが、仮に感染すると致命的になる可能性のあるもの。
危険度4 実験室感染の機会が多く、感染した場合、重傷で致命的になる可能性が有り、かつ、有効な予防方がないもの。
註:実験室をあなたの生活空間と読み変えてください。 危険度:クラス

「エボラ出血熱」は危険度4に分類され、外にクリミア・コンゴ熱、マールブルグ病、ラッサ熱、ヘルペスB,マチュポ、Junin、Variola major、Variola minor、Whitepox、黄熱病(17Dを除く),などで全てがウィルスである。これらの病原体は既に発見されているがその宿主は解明されていない。

多くは血液、体液、排泄物などの接触による感染であり、危険度としては最上級(クラス4)のものだ。ところでウィルス(ラテン語:液、分泌物・蛇毒の意味である。)とは顕微鏡で見ることができないほど小さい細胞を持たない生物が、細菌とは別に感染因子として存在する。これをBeijerinckはかかる病原体を生きた液体性の伝染源と呼んだ。化学的成分はRNA,DNAなどの核酸である。[出典 広川書店 微生物学:13章 著:笠原四郎]

[危険度の表現]

例えば、肝炎ウイルスは、クラスー2bと分類されているか。また、AIDSのように、クラスー2b、クラスー3b③、クラスー4に該当するところがあるものもある。

「病原微生物」の危険度を考えると、「・・・感染性がない・・・」とあるものは、「めったに感染しない。」と考えて良い。 「ほとんど発病しない。」とは、1%程度発病する。クラス分けには多論があるが一応の目安として概念を知っておくことも身を守る術となるだろう。

[病原体の危険性について法律での定義]

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」[平成10年法律第115号・平成10年10月2日公布・平成11年4月1日施行] 本法律により、一類、二類、三類の感染症について関係情報の届け出の義務がある。従って、感染症にまつわる物件(廃棄物や汚染物など)の扱いについては、同法第三章(感染症に関する情報の収集及び公表)の趣意を遵守するために、当該物件などを廃棄する都度、処理業者などに情報の提供を行い感染症の予防または、まん延を予防するものとする。

また、同法第二九条(物件に係る措置 )都道府県知事は、1類、2類、3類感染症について、発生を予防し、またはまん延を防止するために必要と認めるときは、当該感染症に汚染された、または、汚染された疑いのある飲食物、衣類、寝具、その他の物件について所持者に対し当該物件の移動を制限し、若しくは禁止し、消毒、廃棄そのた当該感染症の発生を予防し、または、そのまん延を防止するために必要な措置をとるべきことを命ずることができるとある。

 第1類感染症とはWHOやCDCでも定める国際伝染病としての最有害な病原体なのである。

感染症の定義 
感染症法の分類 感染症名 紙おむつを感染性廃棄物として取扱う
1)1類感染症 (危険度4) エボラ出血熱、クリミア・コンゴ熱、マールブルグ病、 ラッサ熱、など11種
2)2類感染症 (危険度3) 急性灰白髄炎、コレラ、細菌性赤痢、ジフテリア、腸チフス、パラチフス
3)3類感染症 (危険度3) 腸管出血性大腸菌感染症
4)4類感染症 (危険度2) E型肝炎、A型肝炎、高病原性インフルエンザ、サル痘、ニパウィルス感染症、ボツリヌス症、レプトスピラ症、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、その他すでに知られている感染症
  ウェストナイル熱、エキノコックス症、 黄熱、Q熱、オウム病、回帰熱、狂犬病、コクシジオイデス症、腎症候性出血熱、つつが虫病、デング熱、日本赤斑熱、日本脳炎、繁多ウィルス肺症候群、Bウィルス病、ブルセラ症、発疹チフス 性器クラミジア感染症、麻しん、マラリア、野兎病、ライム病、リッサウィルス感染症、レジオネラ症 血液などが付着したものは感染性廃棄物
5)指定感染症: 既に知られている感染症で、1類、2類、3類を除くもので、医療に関する届け出、消毒等が義務づけられているもの。 アメーバ赤痢、咽頭結膜熱、A群溶血性連鎖球菌、感染性胃腸炎、急性出血性結膜炎、クリプトスポリジゥム症、クロイツフェルト・ヤコブ病、劇症型溶血性連鎖球菌感染症、ジアルジア症、水痘、手足口病、突発性発疹、梅毒、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、バンコマイシン耐性腸球菌感染症、百日席、風疹、ベニシリン耐性肺炎球菌感染症、メチリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、薬剤耐性緑膿菌感染症、流行性角結膜炎、後天性免疫不全症候群
6)新生感染症 人から人に伝染性の疾病で、既知の感染症と明らかに異なる感染症。
7)疑似症患者 感染症の疑似症を呈している患者。
8)無症状病原体保有者 感染症の病原体を保有しているものであって、当該感染症の症状を呈してないもの。
9)新感染症

ウィルス病を回避するする術 ウィルスによる感染は 生活環境のミスト(咳などシブキ)による飛沫、排泄物の乾燥等による飛沫、感染者との直接的な接触などにより病原体が物理的行動などにより伝播される。

ウィルスは単独では行動できない。必ず宿主に寄生して移動する。その多くは大腸菌やアメーバーなどの常在細菌や動物組織(排泄物、皮、血液)また、蚊・ハエなどの昆虫である。

こんなところを十分注意して、感染源を封じ込めることがまず誰にでもできる隔離対策でもある。また、消毒することも有効な手段だ。しかし、何んの道具・薬品ももらえなかったら取敢えず感染源の風上に立ち位置を意識しよう。!! と推奨しておきたい。 考えて見てください。

今日、航空機の発達により世界中の時間的距離が短くなった。人、物の流通に並行して、たやすく病原体も早く移動できるということになり、流行の広がる時間が短縮されている。水際どころか、空際作戦も求められるだろう。海外から帰ってくる時、検疫で靴の底まで消毒はしない。貨物でも包装箱までは消毒しない。

医療行為やその介護には「汚いものを、如何に触らないで、目的の動作をするか。」を考えて作業しなければならない。とりわけ「オムツ」なんかは病原体の集合体のようなもので、それを扱う者としては水際の決戦のような作業になるわけだ。

汚物の取り扱いについて言えば、まず汚染源を遮断し、隔離するということを成さなくてはならない。それがポリ袋に詰めるのなら、一旦閉じた袋を逆さまにしてもう一回別の袋に入れて閉じる。といった二重包装の原則がある。

 口で言うと難しいがやってみると簡単なことで、同時にできる袋も存在する。ただ、袋を閉じるとは縛ったりすると中身が保存中に発酵してガスがでる。ほおっておけばパンクする。当然臭いも大量にでる。これらの問題を快決した「おむつ用の袋」(商品名:くるりんぱ)も市販されている。

[おわり]

我国には伝染病予防法が明治30年、(1897年)に制定され幾多の改正をしたが平成10年に廃止され新ためて現在の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」というのが制定された。

実に1世紀ぶりの改革であった。「エボラ出血熱」が何の程度危険性があるかということの定義は前述したが、最も危険な1類に指定され、その危険度は国際的にはレベル4クラスに指定されている。それがアフリカで流行し世界中に広がりをみせている。というのだから、本当に大変なことだ。戦争なんかやっている場合じゃないのである。

簡単に水際作戦といっているが、だれが、何のようにして、行うのか。それは何もしらないあなたです。衛生概念の正しい知識と、自覚、真摯な気持ちを持てば自分を守ることができるだろう。「自分さえかからなければ、他人に染すことはない。」と考えるのも一つではないだろうか。ちなみに、旧伝染予防法では違反行為に対する罰金の最高額は金五円(明治30年、1897年)とされていた。如何に重大なことだとされていたことに注目していただきたい。

2017/9/20